雑巾がけとマスク

  ある日、雑誌か何かに、「毎日雑巾掛けを始めた」みたいな男気溢れる話が載っていて、何だかその雑巾掛けという行動がとても懐かしくて、楽しそうだなあと思いました。

 今の小学校はどうなっているのかわからないですけれど、私が子供の頃は掃除の時間になると全員で机を動かして、毎日、地面を雑巾掛けしていたんですよね。今思うと、なかなかストイックな掃除です。教室を左右に行ったり来たりしたり、長い廊下を雑巾前傾に走り抜けたり。疲れる作業だったと思いますけど、何だか、その頃を思い出すと、無性に楽しそうで、懐かしい気がしていました。

 そんなノスタルジックな哀愁に囚われながら、いや、本当はそんな哀愁は忘れていたのですけれど、今日のご飯はアジの開きにしようとスーパーを歩いていると、目に入ってきました。雑巾2枚セット。真っ白で長方形のやつ。これだ。

 ということで購入しました。

 奥さんに「雑巾??何に使うの?」とキョトンとした顔で聞かれました。我が家の掃除は基本的に9が奥さん、1がルンバなので、私と雑巾という概念には本来一ミリの接点すら無い、そんな世界線の中で突如私が雑巾を嬉しそうに買ってきたものですから、奥さんの訝る気持ちも、まあわかります。でも、雑巾を何に使うって?!はーっはっはっは愚問だな!決まってるじゃあないか!雑巾を掛けるのさあ!

 目が点になっている奥さんを他所に、突然廊下を水雑巾でバタバタバターバタバタバターと走り抜ける私。



なんてことだ、楽しい!これは懐かしい!

 全力で体重をかけて、開けっぱなしにした窓から風を感じながら、木目の廊下を走り抜ける!まずは水拭きで荒汚れをこそぎとり、ダメ押しの乾拭きで磨き込む!夕暮れの陽に輝く廊下は、一微の埃も認めずに、白く煌めいています!!!気持ちいい!掃除最高!雑巾掛け最高!でもめちゃくちゃ腕が疲れた!!!飽きた!!!


 世界各国が「数十万円を給付」とか「普段の給与の全額分給付」とかやっている中で、安倍総理が世界に後れを取るわけにはいかないと満を辞して立ち上がり「日本は全国民にマスクを2枚渡す」と声高らかに宣言したわけです。


 これを決めるまでに、国の中枢での会議があったわけで、「イタリアは30万円らしいです、いかがいたしましょう日本は」「マスクで行こう」「えっ」「マスクだ」「えっ首相落ち着いてください」「わかった2枚」「首相」というようなやりとりが、あったのか無かったのか、いや多分マスク以外にも給付を考えているとは思いますので比べちゃいけないんですけど、時期が悪かった、日本国民全員がズコー!!ってなったわけです。